AEE レポート
Home Page
研究所概要
レポート
資料集・LINK
教育ブログ
Whats News

グリーンルームの提案 北欧の教育環境施設

 2008.10.15 文教施設総合研究所副所長 池崎暢弥


■概論 グリーンルーム 
 日本における学校の環境施設でまず思い浮かべるのは、ビオトープだろう。里山などに代表される身近な自然が激減していることから、学校にそのような代替を求めて近年多く作らていれる。しかし実際施工されたビオトープは、綺麗な箱庭だっったり、止水のあるただの空き地だったりする。一方地域の植生を考慮し、きちんと外来種などを除草などメンテをした、レベルの高い高度なビオトープもある。この場合子供達は不在の大学の研究施設のようになっている事もある。ともかく手作りレベルから研究施設レベルまで千差万別色々ある。
 学校の環境施設の発想で一番多いのは、失われた自然環境を学校に作るという思想が大多数である。一昔前なら、学校通学路で学べたことだったのだが、今では難しくなってしまった。
 
 他国の例がいいのか悪いのか別として、スエーデンを代表とする北欧における環境施設は、国自体が自然環境を保って、無秩序な開発行為など、特に学校周辺ではやらない。例として自然のなかを自転車で小学校から通学している。小学生が自転車通学が出来る交通整備が整っていることは、それだけ地域環境が素晴らしいことになる。  日本においてはどうだろう。一度10Km程度の自転車通勤、通学をしてみれば分かるのだが、自転車で通学する道路状況は汚い、危険、不便と中国よりややましな程度の学校周辺環境である。自分の例で言えば、1年に2,3度は車との衝突や、歩道段差や道路の障害物、また歩行者への衝突を避け、危険な目に遭う。血だらけで出社したこともある。 特に子供や年寄りなど弱者切り捨て、交通事故の多さは北欧の環境にはほど遠い。

 地方など例外はあるが、逆に車に頼った社会であるが故、学校周辺道路における車のアベレージ速度が高い。人が歩いてない自転車も走ってないことを前提に車の運転をしている。よって、たまに起きる事故は死亡事故が多い。
ヘルメットをかぶった小さな小学生が歩く脇を大型トラックが、ギリギリで通りすぎる。よく見るシュールな光景である。

 つまりビオトープは学校内だけで自然を復元するが、それが直ぐに地域環境を良くすることには繋がらない。子供達が大きくなってから、でもその頃は手遅れかもしれない。
もっと別な方法はないのだろうか?

 日本ではそれ程意識されてないが、一つの環境施設として、学校も自然環境の一部として捉えて、学校運用、生活のなかで自然環境のことを学ばせる方法が北欧では取られている。
 人間の生活、つまり学校生活は自然からの御寿と搾取からなたっている。自然の資産を利用して、学校で自分達が寒い思いやひもじい思いをせずに、勉強ができるし生活出来る。このことを学校の色々な施設により子供達に学んで貰う方法だ。

 スイッチ入れれば暖房・冷房、蛇口を開けば何時でもお湯や水が出てくる。電気はいつでも安定して切れる事無く使える。TV、携帯電話、インターネットも簡単に使える。そんな国は少ない。その生活を維持するために多くの自然を搾取している。一日の生活でどれだけCo2を排出しているのか?カップラーメン一杯のスープを下水に流したらどれだけの水がその処理に必要か?、そんな事は豊かな国で学校生活を送っている子供達はTVや教科書の情報としては知っている。しかし殆どの子供達に取って、それは他人事で、どれだけ重要な事かは実感出来ない。大人、先生も同様である。

 この様な自然感を実感できる学校施設、ゴミの分別、冷暖房の管理、自然エネルギーの活用など幾つかはそれを実感出来る施設作りが日本の学校でも始まっている。
そんな施設として、もう一歩踏み込んだものはないだろうか? そんな折り、2007年5月、スエーデンの環境教育ではトップクラスの学校である施設を紹介された。それは「グリーンルーム」だ。 小さい継続可能な循環システムを備えた小部屋。これを日本で実現出来ないか、その検討を帰国後、当研究所にて始めた。

分析
環境施設として
1.自然環境の復元----ビオトープ、菜園
2.自然エネルギーの活用-----太陽光発電
3.地球環境の保全------リサイクル施設(分別ゴミ)ISO14001

■問題点
1.ビオトープ:自然環境復活させる施設------- ・外来種の問題や固定種の繁殖など大切なことだが、学校教育における環境教育とは視点がややずれる。生き物との触れあいを重視している。
・活動が長期的、専門的になり、家庭とか地域の環境向上に直ぐにはつながらない。
・生態系と生物学となり、ビオトープとはいえ、規模から見て、小学校生や中学生に全体を把握するには難しい。
・今の子供達は環境教育はエコ教育、エネルギー問題とか、待ったなし循環型社会を将来作り上げていいかなくてはならない。
人間の営みにおける地域社会、地球への影響などを実体験の中では感じることが少ない。
電気でも水でも、食物までもブラックボックス化されている。
人間の生きる活動でどれだけ、色々な地球環境や地域環境に影響を与えるか、その対策にはどうしたらいいか?実体験において感じられない。


■手段
小さな地球グリーンルームの構築
(目的)
循環性・持続性のある環境教育を実現する。
グリーンルームのミッション(例)
1) 環境測定、環境条件による、小動物(両生類、水性昆虫、川魚)の育成。
2) 環境測定、環境条件による、植物の育成の違いなど観察。
3) エネルギー仕組み、使用量や気象条件の比較など省エネの基礎を指導することを目的とする。

■グリーンルームの概要
「地球環境と同じ様な循環システムをもつ室(ユニット)の実現」
1) 水、光、風、などの自然エネルギーで運用する。
 生きるためのエネルギーの基礎を理解してもらう。
 水・電気・暖房・排水の仕組みを理解してもらう。
  2)部屋内で一つの自然環境を構築。
 地球環境のバランスを理解出来る。
 ミニボトル(小さな循環空間)から発展。

3) 実験室なので運用上の失敗も踏まえた、再生可能ユニット、システム。

■グリーンルームの応用
1)蓄積した経験とデータで運用を実施出来る。
 データ取得、解析などコンピュータを利用。

2) 子供達が参加し計画できる能動的な環境教育システム。

■スエーデン、ゴッドランドのグリーンルームの例

------グリーンルーム外から

-------電気は太陽光発電と風力発電から得る

-------直ぐに屋外へ出られる構造

-------雨水の貯水している

-------雨から地球のサイクルが始まる

-------グリーンルーム室内

-------環境教育に利用

-------グリーンルーム室内
---------------以上