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◆パート2:ビオトープは里山

 春がくると野原一面を黄色に染めるタンポポは、日本の春の風景にはかかせないものです。 このタンポポですが、一般によく見かけるのはセイヨウタンポポという種類です。これはもともと日本の自然には存在しなかったタンポポで、代表的な帰化植物なのです。
さて日本固有のタンポポは、カントウタンポポなどがあります。日本の従来種は、今ではかなり郊外に行かないと見られません。
何故、これほどまで繁殖に差がでたのでしょうか?
理由は、その受粉方法の違いによります。一般に日本固有のタンポポは、虫を媒体にして受粉が行われます。一方セイヨウタンポポは虫に頼らず自己完結しているのです。 つまり、自分自身で受粉しているのです。
よって、ギンバエやヤブ蚊くらいしかいない都心でもその稙群を広げることが可能なのです。
少々ビオトープの話からずれているように思う方もいると思いますが、これはビオトープを造るにおいて大切な問題なのです。

 もう少し同じような例を挙げてみます。
最近、特に見かける帰化植物でセイタカアワダチソウという北アメリカ産の雑草があります。先端に黄色い花を咲かせた背の高い雑草、高いものは2m近くなります。
都心部の空き地などで、群生しているのを見かけた方もいると思います。群生していると結構綺麗なのですが、地下部からアレロパシー物質を分泌し、種子発芽を抑制するため、他の雑草が繁殖出来ないようになっており、非常に繁殖力の強い雑草です。
また、この雑草は地下茎で繁殖するため、土地の栄養を根こそぎ吸収してしまいます。そのためセイタカアワダチソウが根付くと、昔からあった雑草類が侵入出来ません。そんなことで、近頃昔の原っぱのイメージが、この雑草のため一変しています。
特にススキと同じような土壌を好むので、河原のススキがどんどん、このセイタカアワダチソウに浸食されています。
食物連鎖を考えると河原や原っぱの雑草が、単一の植物層になることは、そこに今まで生きていた小さな生き物を追い出すことになります。
これはブラックバスが琵琶湖に昔からいる小さな魚の存在を脅かすことと同じです。

 先だって、仕事の関係で新潟の福島潟、日本の誇る湿原へ行ったのですが、そこでもこのセイタカアワダチソウにススキがかなり浸食されていました。
ここはオオヒシクイという珍しい渡り鳥が来るのですが、長い目で見れば何らかの影響はあると思います。

 以上の話から何を言いたいか、つまりビオトープとは生物の生息環境を意味しますが、ただ、池を造った空き地をそのままにしておくだけでは、我々が思うような自然回帰した土地には、ならないのです。ようするにビオトープとは全てを自然に任せるのではなく
「理想の自然(地域性に合った自然)を身近に造る」という基本思想があるのです。
ヨーロッパ、特にドイツから流行?した自然保護の一環としての都市の緑化方法ですから、これは当然の考えだと思います。
これと同様に、日本人が身近に感じる自然は、里山と言われる昔の田園風景なのです。
小山があり、雑木林があり、田圃があり小川がある。
そこは、メダカ、コブナ、ドジョウ、タガメ、カブトムシ、トンボと日本の今の大人達が育った自然があります。
しかし、この自然は、高度成長期以降の宅地開発や公園化などにより今や壊滅状態です。そこで今、子供達のために、大人達は罪滅ぼしも含めた自分の思いを込めて学校にビオトープを造るのでしょう。

 さてビオトープを里山という意味から考えると、学校、地域、国と生物の生息環境を広い範囲で捉えることが出来ます。となりますと、我々が自然環境問題に取り組めば、必ずこのビオトープの問題に行き着くことになります。そしてビオトープを「理想の自然を造る」という観点から構築すると、一番問題となるのは、ビオトープには管理が必要だということになるのです。
つまり、ある程度手を入れないと、セイタカアワダチソウの餌食になったりするのです。
よって設置する側は、その管理、ランニングコスト(ボランティアでもいい)を考慮する必要があるのです。もし学校にビオトープを置くならば、その地域もビオトープの一環として捉え、地域住民が自然保護、自然回帰に協力していく姿勢が必要です。そうすれば、きっと素晴らしい結果がでるでしょう。

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