【1.研究目的】

近年の学校での教育と生活の間題は、人の行動、建築がつくり出す空間、そこに生じる環境という三つの要素のつながりに起因していると考えられる。そのような状況の中、新潟県聖篭町立聖籠中学校と同町立亀代中学校が統合して従来の特別教室型ではなく、千葉県千葉市立打瀬中学校を手本として教科教室型に移行し、運営の仕方も参考にしていこうとしている。これにより、生徒の行動や集団・個人の形成の仕方、さらには教師との接点の取り方が変化していくと思われる。そのために、それぞれの中学校での生徒の行動とその空間との関係を明らかにすることと、環境が移行した際に比較する資料とすることを目的とする。
【2,調査概要】
教科教室型を採用している打瀬中と、特別教室型を採用している聖籠中を調査対象(Tab.1)とし、平成10年6月30日から7月3日に打瀬中に、12月4日に聖籠中に観察調査を行い、11月19日に打瀬中、12月17日に聖篭中にアンケート調査(Tab.2)を行なった。
1)授業間の休み時間、昼休み、放課後の生徒の空間における位置を平面図にプロットして、それぞれの時間における生徒の集団や個人の分布を見る。
2)授業間の休み時間において、打瀬中では教科教室型の特徴である教室間の移動にかかる時間を測定して、クラス全体の動きを掴む。また、聖籠中では生徒の教室の出入りを数えて、クラス全体の動きを掴む。
3)生徒に学校内の行動や空間に対する意識を聞く。
【3.学校で好きな場所・嫌いな場所】
アンケート調査で生徒に空間に対する認識を聞いた結果、生活の拠点である教室(聖籠中)とホームベース(打瀬中)の好き・嫌いの比率はほぽ4:lで等しい(Tab.3)
。
また、両校ともオープンな場所への帰属意識があるが、学年別に好き・嫌いの侮りが見られる。以後、生徒の特性と空間の特性を合わせて分析していく。