居場所選択と移動に見る     
      生徒の行動特性について

〜打瀬中学校(教科教室型)・聖籠中学校(特別教室型)のケーススタディ〜


 新潟大学教授 西村伸也教授


【9.打瀬中学校の移動に見る生徒の行動特性】
生徒の集周の大きさは両校において異なっており、打瀬中は平均3.2人であり、聖籠中(3.9人)よりもグループが小さくなっている(Tab.8)。また、両校の遊ぶときの集団の大きさよりも小さくなっている。それは移動することにも関係があるのではないかと思われる。 打瀬中のホームベースの大きさは普通教室の2分の1の大きさであり、そのため生徒が大勢入ると大変混雑し、くつろげる場所は狭くなる。ホームベースのくつろげる人数は観察調査(Tab.9)から約10〜13人程度であったが、この人数はホームベースの椅子の数(Tab.10)にほぼ一致している。休み時間の長短(10分休み、15分休み)に関わらず、ホームベースのクラス全体の滞在時間は大体5〜6分程度(310〜400秒)になっていて、廊下や次の授業の教室での滞在時間を変化させている(fig.9)。移動での各生徒の位置をfig.10(1クラス分)に表すと、先頭にいる生徒や末尾にいる生徒など幾つかのパターンがあり、移動の流れを大まかに4つの「まとまり」に分けることができる。その一つ一つのまとまりは約7〜10人程度であり、ホームベースのくつろける人数とほぼ同じかやや少なめである。また、そのまとまりは1グループの平均人数が3.2人であることから、2〜3つの小集団で構成されていると考えられる。
 その4つのまとまりから生徒の移動の流れを捉えることができる。生徒の中には移動しようとする生徒や滞在しようとする生徒がいるが、現状のホームベースにおける生徒の流れのしくみをモデル化すると、fig.11の様に表される。1つのまとまりが入るとホームベースにいる生徒は移動を始めたり滞在したりして、移動の流れを作り出し、移動間では小グループとなり、その小グループ同士をつなぐ場として、ホームベースがある。そこではまとまりを構成する集用に組み替えが起こっている。
 そして、ホームベースにいる人数が増え、勉和状態になると、そこから溢れ出た生徒は空いているホームベースに場を移し、くつろぐ場所の確保や小グループの維持のために、余剰空間利用している。(fig.12)。
 また、生徒間の時間のずれとして最大でTab.11に示される時間差が生じている。この様に生徒はホームベースで混むことを意識し、移動の流れ、時間のずれをつくり出している。特に一人で移動する生徒は一番早い位置での移動が多く、集団との時間のずれが見られる (Tab.12)。居場所における集団と個人の住み分けと共に、時間軸の変化の中で生徒は住み分けを行っている。

【10.まとめ}
 両校における生徒の居場所と住み分けの実態が捉えられた。打瀬中では、学年の領域が階毎に分かれ、個人の居場所・集団の居場所・個人と手段が共存できる居場所も大まかに分かれている。また、教室間の移動によって生徒同士が時間の差を利用することで住み分けが行われている。この様な住み分けは、溢れた行為を受ける空間が多数あり、「空いているホームベース」「オーブンワークスペース」「図書室」「テラス」等の空間が機能しているためでもある。聖籠中は教室か溢れた行為を受ける空間が少ないため、一部の生徒のための空間になっている。
 つまり、溢れ出た受け皿としての空間を設けたり、1つの空間に集団・個人でも利用できる、又は授業に活用でき、休み時間には居場所となる、という様に複数の意味を持たせることが、計画の中で必要であると考えられる。




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